『延喜式』：平安時代中期に記された宮中での制度などについて書かれた古代法典。この中では日本酒についての製造方法が記されています。しかもその製法は数種類あり、古来から米を使った酒造りが行われていたことがよく分かるものとして歴史的価値の非常に高い書物です。そして実は柿も『延喜式』の中に登場するのです。渋柿の製造方法などが記され、古来より寒い時期に向けて保存可能な糖分として生活に欠かせなく、また酒と同様に祭礼用として干柿が使われていました。それだけでなく柿は『万葉集』にも登場し、米は勿論、柿も古来より親しまれてきたことがよくわかります。

また今回使っている柿は、山形県の庄内柿。庄内発の品種「平核無柿」は渋柿の王様とも云われます。この種のない柿に着目したのが庄内柿の生みの親とも云われる酒井調良でした。そして柿だけでなく、リンゴやスイカの栽培、豚の飼育など現在の庄内の名産になる産業に着手しているほか、渋柿の渋抜きの技術の大成者でもあり、庄内だけでなく柿全体に対してもそのインパクトは大きいものでした。これは一技術者として大いに見習うべきところです。地域を大事にしながら、1つ1つの産業自体に対しても情熱を注ぐ姿は尊敬の念に値します。 そして柿はすべて山形県鶴岡市の「金三郎十八代目」の五十嵐大輔さんの作る柿を使用しております。庄内柿の魅力を伝えるため、そして地域循環を意識した取組みもされている方で、当醸造所併設の飲食店Whim SAKE and TAPAS の料理人とのご縁から使用させていただきました。「金三郎十八代目」の柿はすべて酒井調良氏が開発した焼酎を用いた脱渋をおこなっています。そういった地域を大事にしながら1つの造りに情熱を注ぐ姿勢は、改めて造り手として大事なことだと感銘をうけ、気を引き締めて醸造にあたりました。

さらに柿はとても栄養価の高い植物です。「柿が赤くなれば医者が青くなる」という諺どおり、ビタミンも豊富なことで知られます。柿の学名は「Diospyros kaki（ディオスピロス・カキ）」、意味は「神様の食べ物」それほど人々にとって不思議な力をもつ果実であることがよくわかります。そんな柿の力を感じられるよう、雑味少なく発酵させ、米由来の甘さと柿由来の甘さがきれいに調和するよう発酵させております。

古来から宮中で干柿が祭礼で使われるなど、日本人に馴染み深い果実である《柿》を贅沢に使ったどぶろくです。WAKAZE創業時からご縁のある山形県鶴岡市の農園「金三郎十八代目」から直送してもらった庄内柿を使用。脱渋の方法を確立し《渋柿の王様》とまでいわれた庄内の柿の魅力を引き出しました。ビタミン豊富で栄養価も高く、健康の面からも人々に恵みを与えつづけた柿をまるごと投入し、滋味深く豊かな風味を米の発酵とともに表現します。 副原料由来の粒がありますが、品質には問題ありません。冷蔵保管厳守の上、開封には十分ご注意いただき、お早めに召し上がりください。

醸造年度：令和元年酒造年度
製造年月日：R1/12/1（醸造期間：R1/11/16〜12/1）
原料米：出羽燦々(山形県産)、つや姫（山形県産）
精米歩合：掛米70％、麹米70%
副原料：柿(山形県産)
使用酵母：協会6号酵母
製造方法：高温速醸酛二段仕込/Botanical/Non-Pressed（どぶろく）
アルコール分：8度