上喜元(じょうきげん) 酒田酒造 山形県酒田市
上喜元の蔵元「酒田酒造株式会社」のある山形県は有名吟醸酒蔵がキラ星のごとく存在する酒処。私も多くの山形の酒を過去飲んできたがそのレベルの高さにはいつも驚かされる。それは小関先生という酒造鑑定官の熱心な指導の賜物であることに加え、この県の過半数を占める小さな蔵(1000石醸造以下)は杜氏を他所から雇わず蔵元自らが杜氏を兼ねる場合が多く、それだけ時代の求める方向に舵を切ることが早かったためという。上喜元でも蔵元が杜氏を兼ねる。白衣が似合う杜氏さん蔵元さんというより学者さんというイメージが似つかわしい落ち着いた雰囲気の方である。
この蔵の最大の特徴は米の品種をたくさん使うこと。代表品種として地元山形の米「美山錦」「出羽燦々」「山形酒4号」それ以外にも「山田錦」「五百万石」「雄町」「玉栄」「こいおまち」「夢錦」などを使う。それらを平均53%という大変高い精米歩合で「吟醸」「純米吟醸」を主力として造る。またそれぞれの米ごとにも精米歩合や酵母違いが何種類かあり、ほとんどタンクごとに違うという状態になっているという。それは新酒向きの酒。秋上がりする酒という具合に酒のタイプを考えるということもあるし、何よりも少しでも良質な酒を探る探求心がそうさせるという。
また、米と酵母の相性にも気を配り。酵母についての知識・経験を積み重ねている。各酵母のおおまかな特徴はこうだ。
◇小川酵母・・・酸が少なく、やわらかな香り、新酒向けの酒になる。
◇山形酵母.・・・酸が少ない、飲み飽きしない、香りが華やか。
◇熊本酵母(9号系)・・・酸が出る、秋上がり(秋に熟成してのみ頃)する。
そのように精密に設計された酒たちはどれも香り良く適度な旨味、酸味のバランスが良く飲み飽きしない酒。
まさに研究熱心蔵という言葉が上喜元には一番似つかわしいと感じた。